ちょっと話がそれますが「いっぽんの鉛筆のむこうに」という本が、小学生の頃好きでした(前にもどこかで紹介したような)。福音館書店「月刊たくさんのふしぎ」の創刊号。小学生にとって身近な存在である鉛筆ができるまでの工程、それに携わる人々とその家族や生活を追った本でした。その後小学校の国語の教科書にも掲載されたようなので、記憶に残っている人もいるかもしれません。
スリランカのボガラ鉱山、地下300メートルで黒鉛を掘るポディマハッタヤさんは7人家族。長男のサマンタくんは9才で朝、豆のカレーを食べて6:45に学校へ出かける。夜ご飯もカレー。お父さんのことが大好きで、一緒にクリケットや歌をうたったりして遊ぶ。
そんなふうにアメリカのシエラ・ネバタ山脈で木こりとして働くダン・ランドレスさんや、切り出された丸太を運ぶトレーラー運転手のトニー・ゴンザレスさん(印象的な力こぶ!)、木材を日本まで運ぶコンテナ船でコック長として働くミグエル・アンヘル・シップさん(ヒゲメガネ!!)、港でコンテナを下ろす高橋清志さん、山形にある鉛筆工場で働く大河原美恵子さんや川崎で文房具店を営む佐藤きみのさんまでその人となりを紹介していきます。
どこの家にも転がっている鉛筆を作るために沢山の人が関わり、それぞれに思いをもって仕事に励み生活を営むことが綴られています。この本を読んでから鉛筆を見る目が少し変わり、大切に思うようになりました。そして世の中にはいろいろな人がいてたくさんの仕事があって、そのすべてがとても尊いものだということを知りました。
私たちが日々楽しんでいるおいしい一杯のコーヒーのむこうにも、たくさんの人が関わり、そこにたくさんの暮らしがあります。そのことに興味を持ち知ることで、おいしい一杯のコーヒーがより豊かなものになるんだと思います。同時に、その一杯の豊かさの恩恵は、そこに携わるすべての人のものでもあってほしいと思います。
そのために長い旅路の果てにたどり着いたコーヒーを最後に楽しむ私たちにできることはなんなのか。
まずはどんな人が携わっているのかを知ること。どんな人が関わっているか知ることができるコーヒーを選ぶこと。亮くんや和光くんから、どこから仕入れたどんな豆なのかを聞きながら、自分がなにに対して価値を見出して選択しているのかを意識すること。おいしいことと、その向こうにあることを知り関わることを同様に楽しみたいです。
「いっぽんの鉛筆のむこうに」には、「スリランカのポディマハッタヤさんに手紙を送くろう」と住所が載っていました。日本のどれだけの小学生が実行に移したかは分かりませんが、少なくとも甲府から1通のはがきが海を越えていきました。そのページにはポディマハッタヤさんからのこんなメッセージが載っていたことをよく覚えています。
「わたしのほった黒鉛でつくられた日本の鉛筆が、勉強につかわれ、それが日本の発展にやくだっているのをうれしく思います。これからもいっしょうけんめい勉強してください」